──口臭を起こさず、歯を抜かれないための“歯周病との付き合い方”──
私たちの口の中には、健康な人であっても「歯周病菌」が常在細菌として住んでいます。とくに40歳を超えると、歯周病菌の数は増え、反対に口腔内の免疫力は年齢とともに低下していきます。
このバランスが崩れたとき、つまり 免疫が落ちたり、ケアが不十分で菌が増えすぎたりしたときに“歯周病”が起こります。

そして重要なのは、歯周病は一度治しても「終わり」ではないということ。
常在細菌である歯周病菌はずっと口の中におり、免疫が落ちるタイミングをいつも伺っています。これを “日和見感染(ひよりみかんせん)” と呼びます。風邪のように「外から病原菌が入って発症する」感染症とは、まったく仕組みが違うのです。
ですから大切なのは、
①歯周菌に“隙”を与えないこと(予防管理)
②なぜ歯周病が起こったのか、その背景(ストレス・生活習慣)を整えること
この2つです。歯周病は、糖尿病やがんと同じく「生活習慣病」の一面を強く持っています。
歯周病が“特殊な病気”と言われる理由
少し細菌学の視点から掘り下げてみましょう。
たとえば、同じ細菌による病気でも「コレラ」はまったくの別物です。
コレラ菌は体内に通常いない“外から来た病原菌”です。大量に摂取して腸に定着・増殖し、毒素が腸管を破壊して重度の下痢・脱水を起こします。
しかし、定着前に抗生物質で菌を叩けば治りますし、増殖を止められれば発症しません。
ところが歯周病は違います。
原因菌が“もともと自分の味方である常在菌”であること。
ここが決定的に他の感染症と違います。
哺乳類にとって、歯周病菌のような嫌気性菌が口腔内に定着していることは、本来メリットでもあります。外界から入ってくる危険な嫌気性菌から身体を守る「盾」の役割でもあるのです。
ところがこの共生関係には“代償”があります。
歯周病菌は毒素を出すため、歯肉や骨をゆっくり破壊します。
宿主(人間)にとってはダメージですが、菌にとっても歯が抜けてしまうのは困ります。そこで歯周病菌は 「歯石」を作って歯を固定し、住処を守ろうとします。
つまり歯石とは、
“菌が自分たちの住家(歯)を失わないために作る砦”
でもあるのです。
なぜ動物は歯周病にならないのか
野生動物は歯石だらけですが、生涯歯を失いません。
理由は単純で、
歯周病になる前に寿命が来るから。
歯を失うことは野生では致命的ですから、自然界の寿命の中では歯周病が問題化することはほとんどありません。
例外は、人間に飼われている犬や猫。
不自然な食生活と医学の発達により長生きし、人間と同じように歯周病を発症します。
人間の宿命:治してもまた“戻りやすい”病気
人間は自然寿命より長く生きるようになりました。
その結果、本来は宿主と菌のバランスを保つためだった「歯石」が、かえって歯肉や骨を破壊し、歯を失う原因になります。
この状態が「歯周病」です。
一度治しても、歯周病菌そのものは常在細菌として残ります。
加齢で免疫が落ちるほど、再感染(再発)のリスクは高くなります。
だからこそ、
“治したあと”の専門的メインテナンスが歯を守る絶対条件。
むしろ、治療後からが本当のスタートなのです。